レイテ島の現状1 タバンゴのバランガイキャプテン(町長)へのインタビュー及び現地視察

「フィリピンの今、現地に在住する23歳からのメッセージ」

連載第3回
「レイテ・タバンゴのバランガイキャプテン(町長)へのインタビュー及び現地視察」

今回筆者は日本でも大きく報道されているレイテ島に入って取材を行った。
この報告は今回と次回の2回に分けて場所ごとにまとめていく。

今回はセブ港からレイテ島オルモック港までの移動、オルモックの現状、オルモックからタバンゴというレイテ島西部の町の現状についてお伝えする。

筆者は今回、特定非営利活動法人 日本リザルツの現地の受け入れを行った。

今回はこの団体の代表である白須 紀子様を含む2名の方と、株式会社エコレグループ代表取締役CEOの木下優様とそのスタッフ様1名、株式会社 ジェイ・ピートレーディング様のスタッフであるフィリピン人男性の方1名とそのご家族様1名の計7人のスタッフと、タバンゴの中のInangatan(イナンガタン)というバランガイのキャプテン(町長のような立場)というメンバー構成での現地入りだ。

日本リザルツ様は政策提言や普及啓発活動(アドボカシー活動)を行っている国際市民グループ(NGO)で、民意の反映された国際援助を実現し、飢餓と貧困の根絶を最優先とする“政治的意思”の確立に向け活動している。1985年米国で設立された後、日本リザルツは1989年に発足し、イギリス、オーストラリア、カナダ、ドイツ、メキシコ、フランス等のパートナーと共に、各国ODA(政府開発援助)政策等において、貧困対策を重視することの必要性を政府に提言している。

事前ミーテ
11月20日にセブにて事前ミーティングが行われ、
バランガイキャプテンのWillyさんから現状の共有と明日の日程についての説明があった。

当日は4時30分にセブ港第4発着所に到着し、5時半には出港となった。
今回はチケットを筆者が事前に取得したが、当日の発行で列を成す人々の姿も見られた。
またチケットの発券には、

・ローマ字のフルネーム
・年齢
・性別

の情報が必要となるため、現地入りの際にグループ全員のチケットを1人が代行取得する場合には、全員の情報をまとめてから買いに行くことをおすすめする。

セブからオルモックまでは2時間強かかる。現地に到着するのは8:00前後になる。

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セブ港の様子。朝4時半から多くの人が列を成す

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朝焼けとフェリー

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フェリーに乗船すると支援物資が山積みになっている


オルモック

オルモックはレイテ島の西部にあり、多くの船が発着する港町となっているが、今回の台風により大きな被害を受けた地域の1つでもある。


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オルモック港の屋根は大きく崩れている

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大量の物資をフェリーから取り出す様子

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現地の方々も必死に生活をしている

ここから筆者たち一行はバランガイキャプテンのWillyさんの町である
タバンゴを目指し警察2名と共に出発。オルモックの現状について話を聞くことができた。

オルモックにはガイサノというセブでも有名なチェーン展開の大型スーパーマーケットが2軒あるが、いずれも住民の強制立ち入りのためフェンスなどが壊れ閉店。物のほとんどが持って行かれてしまったという。また現状では個人の商店でも営業できているところは少なく、少ないがために1つの店舗に人が集中する現状がある。

これに伴って通常警備の必要がない小さな店の軒先にも警察が立ち、警戒を強めている。
筆者も車窓からその様子を実際に見たが、どの店にも長い列ができていた。

またガソリンスタンドが壊れているために、通常のようにホース上の物をつかって車に直接ガソリンを入れられないため長蛇の列ができてしまったり、そもそもガソリンが少ないためそれを求めての列もできてしまう。

現時点ではライフラインがほぼ全て絶たれていると言っても過言ではないオルモックでは、
非常に厳しい生活が続いている。


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現地ではマクドナルドを凌ぐ人気のジョリビーも被災のため閉店

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港から見えるドーム型の建物が大きな被害を受けている

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海沿いには瓦礫が堆積している

タバンゴ

オルモックから車で北西に1時間ほど、
大きな道から折れて田舎町を進んで到着したのがWillyさんの町であるタバンゴ。
海沿いの町だが、海岸から一気に山がそそり立つ地形となっている。

ここで筆者たちは緊急支援物資の提供を行ったが、Willyさんの話では他のバランガイ(フィリピンの最小行政単位)からタバンゴに人が流入しているので正確な数が把握できず、支援物資を仕分けて配っても不足が出てしまうとのことであった。

災害発生後からレイテ島内の住民の動きを正確に把握することは難しく、他のバランガイへの流入・流出だけでなく、他の島への流出もあるため、今後緊急支援の際には頭数を把握するのが非常に困難になると思われる。

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道の両脇の木が倒れかかかっている(イナンガタン)

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折れてしまった木

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この町の集会所の前も未だに木が倒れたまま

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イナンガタンの救急車は駐車場の壁が崩れ、窓が割れてしまった

ここでの緊急支援は物資をWillyさんに手渡して翌日に仕分けを行ってもらうことになったため、直接手渡しすることはなかったのだが、Willyさんが集会所にて住民に対しその旨を発表した。実はこの町にNGOが入ったのは世界初とのことで、住民の期待も大きかったようだ。

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住民に緊急支援の到着をアナウンスする様子。右からWillyさん、白州日本リザルツ代表、筆者、木下CEO

タバンゴには約33,000人が住んでおり、その内Willyさんのイナンガタンには約5000人が住んでいる。
建物に被害を受けたのがイナンガタンの1,002の家庭のうち922家庭と、約86%となっている。

またこの地域では食料の不足に伴い母乳が出ない母親がおり、その代替案として重湯(おかゆを作った時に出る上澄みの水)を飲ませているそうだ。

子どもたちの間では咳と熱が広がりつつあり、その原因としてビタミン不足が挙げられる他、1,002の家庭に対して医者が1人しかいないため、治療が到底追いつかないという。

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涙を拭う現地の方 日本の津波をきにかけて下さり、共に手を取りましょうと話した

このイナンガタンには他にも小さな漁師のコミュニティーがある。
こちらは46の家庭があり、1家庭平均が5名。
被害を受けたのは漁師船「バンカーボート」で、
1隻が約4,000ペソ、エンジンが7,000ペソ、網が1,000ペソ必要となる。

また屋根の復旧も急務となっており、
トタン屋根10フィートで1枚275ペソ、
1家庭最低でもこれが2枚は必要だそうだ。

更にそれを留めるネジが1キロ60ペソ、
2枚のトタン屋根を止めるのには500グラムほどが必要とのことで、
少額ではあるものの、現状では復興に時間がかかる。

筆者はこの地域を継続的に支援していく現地の臨時スタッフとして、活動を続けていく予定だ。

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バランガイキャプテンを先頭に調査を行う


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この家では2隻のボートが壊れた


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跡形も無い家


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壊れたバンカーボート 生活必需品だ


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今回の緊急支援を説明するバランガイキャプテン

次回はタバンゴを出発し、最大の被災地と言われるタクロバンの現状をお伝えする。

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